コーディネーション: |
2年生版研修報告書でも述べたように、PROMETAMは教育省、教育大学をカウンターパートとして行われることから、全体調整は教育省、教育大学双方の責任において行われるべきである。今回の3年生版研修においては、前回の報告を参考に、PFC事務局(教育大学)が新たに受講に関する学生への規定を作成するなど、改善意図が見られた(それが引き金となって以下に「受講生の出席状況」欄で後述するような問題が起こり、さらなる連携の必要性が認識されたが)。しかしながら、一部を除き、教育委員会からの支援等はほとんど得られなかった。研修後に行われた研修小委員会による反省会にも、連携の悪いところほど関係者が参加していなかった。中央と各地域および各地域コーディネーターと教育委員会は講義日程や受講者などの情報を共有し、緊密な協力体制を築くべきである。また、具体的な対処として、日本人講師、PFCローカルコーディネーター、地区教育委員会のTORを明確に文書にて確認することにした。次期研修までに、中央だけでなく、各地区にも周知徹底したい。
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講義実施における物理的環境: |
ダンリ地区において、コーディネーション不足から、講義開始当初、教室の不足があったものの、全体的にはおおむね良好であった。講義にあたって、ホンデュラスの教育現場では、教員が自分で準備することが半ば慣例になっているチョークや黒板消しも準備されているところが多く、改善が見られる。
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受講者の出席状況および成績:
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先に述べたように、前回の報告を参考に、PFC事務局(教育大学)は新たに受講に関する学生への規定を作成した。そこには、「理由なき欠席は認められない。理由があっても出席すべき日数の最大限10%までの欠席しか認められない」旨が記述されている。全体的には、この規則に従い、出席状況はより改善されたと言える。ただし、以下に別記するような問題が起こったり、トルヒーヨ地区の受講者の中には、大学の講義に対する認識が低く、講義中にもかかわらず教室内での飲食をはばからない者、休憩後の遅刻の多い者が相当数いた。これらの問題には、日本人である隊員には対応が困難な部分も多くあり、上に述べたようにPFCローカルコーディネーター、地区教育委員会の役割分担を明確に定義した文書を作成するなどの対処を行いたい。
成績に関しては、欠席超過による講義未修了者が1名いたものの、評価点自体が60点に満たず不合格となった者はゼロであった。前回同様、非常に高いインセンティブを維持できているといえよう。
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問題1 |
トルヒーヨ地区において、ある男性教員が無断欠席をし、大学規定にのっとり注意を促した隊員に対し、失礼な発言を繰り返した。ローカルコーディネーターから大学規定の説明と注意が行われ、問題行動は収束した
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問題2 |
ソナゲラ地区において、ある男性教員が半日の学校行事を理由に丸1日欠席した。大学規定にのっとり注意を促した隊員に対し、成績を下げられると勘違いしたこの教員は、地元のラジオで隊員の名前を挙げて、「愛国心に基づいた自分の教員活動を迫害した」と痛烈な批判を行った。また、その後も、教会活動で2日間授業を欠席すると公言し、隊員から最終試験の受験資格を失うことになるとの注意に対し、地元で署名活動を展開。教員組合、裁判所に提訴し、大手テレビ局にも持ち込むと脅迫まがいのことをした。状況連絡を受けたチーフは、早急にPFC事務局と連絡を取り、事実関係を確認すると共に、現場へ赴き、問題の教員、ローカルコーディネーター、教員が勤める学校の学校長、およびテグシからのPFCコロン県担当コーディネーターとで話し合いを行った。席上、「明らかに大学規定に反した行動」「隊員は規定どおりに注意しただけであり、規定に対し不服があるならコーディネーターに具申すべき」「ボランティアとして協力している日本人講師に対し、不条理にも数々の嫌がらせを行ったのは極めて恥ずべきこと」と大変厳しい批判がなされた。翌週になって本人から謝罪文が届けられ、問題は解決した。
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問題3 |
同じくソナゲラ地区において、ある女性教師が、前回の2年生の研修において6日間欠席し、単位が認められていないにもかかわらず3年生の研修に出席。2年生の単位を認めるよう要求。明らかに、3年生の履修を認めたローカルコーディネーターの落ち度であるが、欠席の理由が妊娠・出産にまつわるものであったこともあり、PFC事務局としては規則を厳格に適応することがためらわれた。結果として、この教員は3年生の研修はこのまま受講させ、2年生分は他地域で行われている同じ名称の科目を履修することとなった。
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問題4 |
オコテペケ地区において、ある女性教師が子どもの病気のため6日間欠席した。しかし、大学の規則を了解しつつも、その後講義に出席し続けた。上記の問題と同様、同義的事情から、争いを恐れた大学は、最終試験を受ける資格があるか否かを判定するテストを実施するようこちら側へ指示した。論理的に筋が通らない対処ではないかと再確認した上で、指示に従い試験を実施。採点はローカルコーディネーターに行わせ、不合格、つまり最終試験受験資格無し。隣県で実施されている同じ名称の科目を履修することと本人に納得させた。
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教訓 |
ホンデュラスでは、文書で規定された規則とその実際の運用とには距離がある。「講義を受講せずに単位が取れるなら大学講義は必要ない」と説明しても、例外はいくらでも作り得るのである。特に、弱い性である女性の妊娠・出産等はやむなき理由であると考えるのが一般的。地方ほどその傾向は強く、杓子定規に規則を適用できない。これらの問題に関しては、日本人は前面に出ず、必ずローカルコーディネーターに対処させるべきである。また、ローカルコーディネーターもしばしば不適切な判断をすることがあるので、そのときには責任者である大学側の指示を仰ぐ。
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受講者による評価: |
今回の主力講師はすでに2回以上の研修をこなしている隊員ばかりなので、非常に良好な評価結果で、受講者には満足度の高い講義であったことがうかがえる。ただ、評価が適切に行われているかと言えば、厳しい講師に対してほど辛い評価になっており、必ずしも額面どおりには受け取れないかもしれない。「コミュニケーション」でもっとも評価点の低い講師は、間違いなく語学が一番できる隊員であった。
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指導書・作業帖に関する評価: |
受講者、講師双方からのコメントはおおむね良好であったが、指導書に関して、文字が小さい、作業帳に関して、計算スペースをもっと広くすべきなどの意見が寄せられた。
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